読書:ベルリンは晴れているか(三件追記)

昨年6月に朝日新聞に書評が載り
近所の図書館に予約して、読む日を心待ちにしていた小説
「ベルリンは晴れているか」を、遂に手にしました。
450ページ以上ある、分厚い単行本ですが
昨日借りて、一日半ほどで一気に読了。

タイトルをパッと見て
パリを撤退するときに、かの美しい都を燃やそうとした
ヒトラーの有名な一言「パリは燃えているか」を
思い起こす方も少なくなさそうですね。
勿論ヒトラー絡みではありますが
でも、この本はすごく「深い」です。


<追記 その3>
まず筑摩書房のサイトから、あらすじをご紹介します。
1945年7月。ナチス・ドイツが戦争に敗れ米ソ英仏の4ヵ国統治下に
おかれたベルリン。ソ連と西側諸国が対立しつつある状況下で、
ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が、
ソ連領域で米国製の歯磨き粉に含まれた毒により不審な死を遂げる。
米国の兵員食堂で働くアウグステは疑いの目を向けられつつ、
彼の甥に訃報を伝えるべく旅立つ。
しかしなぜか陽気な泥棒を道連れにする羽目になり――
ふたりはそれぞれの思惑を胸に、荒廃した街を歩きはじめる。 



<追記その2>
ネタバレしても構わない方、既読の方には
以下のサイトをお勧めします。
http://www.webchikuma.jp/articles/-/1511
webちくま掲載の、ライターの瀧井朝世さんによる書評です。
同書の構成が分かりやすく紹介され、また
グレーゾーンを多層的に描いた魅力などがまとめられています。



以下、極力ネタバレなしで、感想を。

ドイツの第二次世界大戦とその前後の
社会と人々の混迷ぶりが、圧倒的な取材と豊かな筆力によって
リアリティをもって実に克明に描かれます。

一人のしっかりと自分を持った少女を主人公に
戦後と戦中が交互に描写され
衝撃と共に希望の光も感じられるラストにつながるのですが
その過程が、様々な「痛み」に満ちています。
それらが、いちいち本当にリアルで
ページをめくる手が思わず震えてしまう程。


<追記その1>
史実の断片を知識として知ってはいても
こうして物語として紡がれてみると
真実味がかえって生々しく迫ってきます。
当時のベルリンの空気を肌で感じられるようでした。

また、ミステリー要素の描き方については
賛否両論あるようですが
私には、粗とは感じられなかったな。



実に重い読後感の残る一冊でした。

自らや、自分を取り巻く社会を振り返って
考え込まずにいられません。

作中には何度か、戦況が怪しくなってからのヒトラーのことを
表に出てこないと非難する描写が出てきます。
そういえば、最近、作家の辻仁成さんのブログを読んでいたら
「コロナ禍で政治家に求められるものは何か」と題した投稿の中で
「日本政府のコロナ対策が(中略)なぜか
 国民の不安をあおるものが多いのはなぜだろう。
 政府の見解がぶれる原因はなんだろう。
 国をこうやってコロナから守るべきだと
 強い信念を持った中心となるキーマンが不在だからじゃないか。」

と語っていました。

今日も東京都では300人近い感染者が確認されたと発表されました。

信念があればいいというほど、ことは単純ではありませんが
今、この状況で、自分は社会に対してどういう姿勢でいたらいいのか
冷静に判断し、行動にも反映させたいと思います。

それにしても、読書は
時には高みに、時には思わぬ広い世界に誘ってくれる
私にとって、欠かせないものです。
そう、改めてつくづく感じています。

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